白鷺

大きな白鷺が電信柱のてつぺんにとまつてゐます。この白鷺とは長い付き合ひです。いつも河の底をつついて、たべものをさがしてゐます。その姿はじつに孤独です。でも、時には、すばらしい羽を広げて、わつさわつさと空を舞ふのです。

記憶その2

わたしは近所の子供と、小さな山で遊んでいました。小さな山は、わたしが通っていた学校の裏にありました。そして、山の向こうは一面の砂漠です。わたしたちは木に上っていました。そして、3、4人で猿のように木の上で話をしていました。わたしたちがして…

記憶

A君と遊んでいたら、たまたまそこに来たB君と知り合いになりました。B君とは初めて会ったのですが、どうやらA君の友人のようです。3人は一緒になってしばらく遊んでいました。なにをして遊んだのか忘れましたが、とても楽しかったのを覚えています。やがて、…

dé-dialectique

個人と全體の間というものは、いろいろと問題をはらんでいます。個人を中心にものを考えてみます。個人の世界は大變狹いものです。個人の諸事情によってそれは各種各樣のものとなります。ある程度は他人と相亙る領域はあるものの、そこは他人はやはり他人で…

田谷力三

田谷力三の1983年の映像です。田谷力三(1899−1988)は浅草オペラの看板俳優兼歌手でした*1。田谷は三越百貨店の三越少年音楽隊に入り、大正6年(1917年)、18歳の時にオペラ歌手としてデビューします。田谷は美貌と才能に恵まれていたので、すぐに浅草オペ…

明日はお立ちか

「明日はお立ちか」は昭和17年(1942年)の流行歌です。明日はお立ちか、お名残惜しや、で始まる哀切たつぷりの歌です。出征兵士の妻が夫を見送る歌なのですが、よくこんな寂しい歌が戦争中に出せたものだと思ひます。夫を戦争に送り出すのがいやでいやでし…

泥鰌

さかながすきです。さう。たべるのも。飼ふのも。きつと、さかなの形が好きなのでせう。わたしとさかなとの関係は因縁浅からぬものがあります。最近、さかなを飼ひたくて仕方がありません。今まで、いろいろなさかなを飼つてきました。金魚、鯉、鮒、なまず…

食堂車

わたしが子供のころの話です。わたしはその日、東京から新大阪に向かふ新幹線に乗つてをりました。たつた一人でです。シンカンセンはすべるやうに走つてをりました。車掌さんが巡回にやつてきました。わたしが一人で座つてゐるので、一人かい?と車掌さんは…

環島旅行

交通部台灣鐵路局は、いはば台湾の鉄道省、もしくは国鉄のやうなものです。「台鐵」と略して呼ばれるやうです。この台鐵の台東行きの汽車に、わたしは乗つてをりました。わたしが目指してゐたのは、花蓮といふところです。花蓮は多くの台湾人観光客、そして…

採檳榔

4月5日の日記で http://d.hatena.ne.jp/kimikoishi/20070405 で「採檳榔」といふ歌のことを書きました。この歌は周璇や訒麗君も歌つてゐて、もともとは中国湖南省の民謡ださうです。軽快な曲調で、わたしはとても気に入つてゐます。高高的樹上結檳榔 誰先爬…

漢字

漢字にはいくつか種類があります。1、正字、正漢字、旧漢字 2、新字、新漢字 3、異体字 4、略字 5、中華人民共和国、シンガポールの簡体字 6、中華民國(台灣、共和国以前の中国)、香港の繁体字他にもあるかもしれません。ベトナムにも漢字があったの…

入隊

某日余ツラツラ思フニ、此儘碌々タル生ヲ終ヘムハ餘リニ悲シク、然リト雖モ、改メテ業ヲ興サンニハ、心身ノ健壯ヲ早急ニ復舊セザレバ、到底爲ス能ハザル事ニ思ヒ至ル。然ルガ故ニ、余此處ニ於テ、遂ニ「入隊」ヲ決意スルニ至レリ。 入隊先ハ憲兵隊……デハナク…

魯肉飯

魯肉飯(ルーローファン)は台湾ではいたるところでたべることができます。日本で云ふところの牛丼みたいなものでせうか。ラーメンみたいなものでせうか。そのくらゐの人気のたべものです。魯肉飯はどんなものかといふと、ご飯の上に、香料で煮込んだ豚のひ…

麥當勞

「麥當勞」mai-dang-lao、マイタンラオ。なんのことでせう?これは中国語なのですが、実はマクドナルドのことです。マイタンラオとマクドナルドはどう聞いても音が違ふのですが、中国語には、日本語のカタカナのやうな表音記号はありませんので、こんな風に…

老眼鏡

わたしはかなりひどい近眼です。棟方志功ほどではありませんが、結構ひどい近眼です。近くを見るときはよいのですが、遠くがいけません。もわもわとしてゐて、小さな字は読めません。とりわけ困るのが「液晶画面」です。このごろは、とくに駅などで液晶掲示…

ぽんぽこ

むかし、ぽんぽこといふお菓子がありました。ロバ製菓のお菓子です。ロバ製菓は「ひよこ」といふお菓子も売つてゐました。「ひよこ」はつい最近まで売つてゐましたし、テレビで宣伝もしてゐたのですが、ロバ製菓さんは土地投機に失敗して倒産してしまつたや…

ぷきい

さて、右上のぶたの写真なのですが、このぶたはいったいなんでしょう?実は、上海商業儲蓄銀行という銀行がありまして、そこのマスコットキャラクターなのです。名はpukii(プキー)と言います。pukiiには両親と兄弟がいます。「儲け蓄え」銀行という名もす…

トンネル

わたしの親族から聞いた話です。昭和初期のことです。仮にA氏としておきませうか、A氏が学生の頃の話です。A氏はH県のT郡といふところに住んでゐました。今も田舎ですが、当時はもつと田舎だつたところでした。A氏は毎日汽車に乗つて、中学校に通つてゐまし…

古本屋

わたしが京都に住んでゐたころの話です。ある初春の日暮れ前に、友人がわたしの家に自転車でやつてきました。そして、面白い古本屋を見つけたので、今からそこに行かうといふのです。古本屋は好きなので、それなら行かうと立ち上がりました。わたしも自転車…

フラ印ポテトチップス

君知るや フラ印ポテトを 知らずや君 フラ印ポテトを わたしは輸入食材店が大好きです。なぜ好きかと言ふと、見たこともない食品がたくさんあるからです。外国のものは、味も日本のものと少し違います。それが、とても新鮮で、すさみきつた生活に潤ひが生じ…

シャボテン

昨今の桜花爛漫と時を同じくして、シャボテンの花が咲きました。御覧のとおりの白い花です。シャボテンといっても、これは多肉植物です。多肉人間ではありません。多肉植物です。とげのないふっくらした葉で知られています。ここに水がたっぷり入っているの…

あんバーガー

君知るや、ウェンディーズを。あんバーガーを。知らずや君、あんバーガーを。ウェンデーズと言いますのは、ハンバーガーショップでございます。日本のハンバーガーショップには、マクドナルド、ロッテリア、ドムドム、ウェンディーズ、わにのマークをマスコ…

雲の果て

雲の上に住めたらいいなあと思ひます 彈胡弓洋燈幽搖 小紅火明滅遠送 愈去不見夜霧中 胸中白蓮花枯時 再不見黄包車去 夜雨煙中四馬路 離去之身蕭蕭然 告別于霧中上海 遙望明日之雲海

臺灣桃園國際機場

先日、友人夫婦とその子供である女の子二人と、神社にゆきました。神社で、友人が女の子に五圓玉をあげました。女の子はその五圓玉を賽錢箱に放り投げて、熱心に拜んでいました。わたしも二禮二拍一禮をしました。賽錢は入れませんでした。すると、それを見…

臺灣鐵路局

台灣の松山にある慈祐宮といふところにゆきました。松山にゆくには台北から汽車に乘ります。臺灣鐵路局の台北驛から松山驛まではわづか一驛です。慈祐宮のことは改めて記すとしまして、歸路、松山驛から乘つた汽車はなかなか痛快なものでした。汽車は「自強…

おいち

ヤバイといふ言葉があります。一昔前は、やくざ映画かなにかで、チンピラが「オイ、やばいぞ。ずらかれ」などと叫んで、一斉に皆が逃げる、といふやうな場面がよくありまして、「やばい」といふ言葉をそんなところから覚えたものでした。もつとも、わたしは…

カルフール

先日、カルフール*1に行つてまゐりました。カルフールはフランスを本拠とする、売上が世界第二位のスーパーマーケットです。店名のCarrefour(カルフール)とは、フランス語で「交差点」といふ意味です。カルフールはいはゆる大規模小売店舗、ハイパーマーケ…

続 みづうみ

(承前)雪の道をやっとのことで登って、おそろしい坂をも下ったのですが、みづうみはすっかり凍っていました。周囲の真っ白な雪とみづうみの区別がつきません。こんなこともあるさ。と、口をきつねのようにあけて、ぽかんと見ておりました。びうびうと風が…

みづうみ

主は仰せを地に遣わされる 御言葉は速やかに走る 羊の毛のような雪を降らせ 灰のような霜をまき散らし 氷塊をパン屑のように投げられる 誰がその冷たさに耐ええよう 「詩篇」(147) わたしは山の中にいました。国定忠治や東海林太郎の「赤城の子守唄」で有…

龍膽寺雄

龍胆寺雄は明治34年に茨城県の下妻に生まれて、主に昭和初期に活躍し、平成4年に亡くなつた小説家です。*1わたしは高校生の時に、龍胆寺の作品を愛読してをりました。龍胆寺については、以前にも少し書きましたが(http://d.hatena.ne.jp/kimikoishi/2006033…