漢字
漢字にはいくつか種類があります。
1、正字、正漢字、旧漢字
2、新字、新漢字
3、異体字
4、略字
5、中華人民共和国、シンガポールの簡体字
6、中華民國(台灣、共和国以前の中国)、香港の繁体字
他にもあるかもしれません。ベトナムにも漢字があったのでしたっけ。わたしはそのあたりのことはよく知りませんので、知っている方がいらっしゃいましたら、教えていただけましたら幸いです。
1は、江戸以前から戦前まで使われていた漢字です。ただし、江戸時代とそれ以前の時代では、『康煕字典』などにある、また中国のさまざまな本から借用した多くの異体字が使われていましたので、旧漢字とは、明治初期から戦前まで使われていた漢字、と考えるべきでしょう。
明治初期に、平仮名を基本的に一音一字にしました。すなわち、変体仮名を排したわけです。たとえば、今は「な」は「な」としか書きませんが、本当はもっと多くの書き方がありました(くずし字事典のようなものをごらんになってみてください)。これらは変体仮名として教育の世界では廃止されました。その影響を受けて、活字としても徐々に消滅してゆくことになります。
ただし、戦前期には、変体仮名も、活字としては少ないものの(明治期には変体仮名の活字も多くありました)、書き文字として普通に通用していました。
この平仮名の整理と平行して、異体字も多く廃止されました。戦後の改革の時と同様に、明治初期にも漢字の整理が行われていたわけです。
2は、戦後に定められて以来、今に至るまで使われている漢字です。ただし、そのうちのいくつかは、戦前に、すでに「簡化字」として提唱されていたものを採用しています。
また、戦前に、生活の中で使われていた書き文字としての略字も採用されました。したがって、戦後に全部が新しく作られたわけではありません。
3は、たとえば、水戸光圀(水戸黄門)の「圀」のようなものを異体字と言います。圀=国なのですが、これは則天武后が勝手に作った則天文字です。
名前の字で「高」(⇒はしごの高)や「吉」(⇒上が土の吉)を少し変化させた字を使っている方が時々いますが、これも異体字です。大きな辞書でないと載っていないような膨大な量の異体字があるわけですが、これは旧漢字ではありません。
旧漢字とは、これらの異体字を排したものを言うわけですが、実は異体字のほうが「正しい」漢字とされる可能性もあったということになります。
4は、そのうちの多くが戦後に新漢字として採用されました。旧漢字は画数が多いので、書く時には略した漢字を使っていたわけです。
戦前には、たとえば「学」「国」などは活字にはありませんが、一般的には書き文字として多く用いられていました(「国」の「玉」は、戦前の略字では「玉」ではなく「王」でしたが)。
新漢字として採用されなかったものの、最近になってパソコンの活字として採用された略字に「侭」などがあります。
5の簡体字は、中華人民共和国成立後に制定されたものです。日本の略字以上に大幅に略されたものが多く、書くのが大変楽です。たとえば、「無」は「无」と、「気」は「气」と書きます。
シンガポールの簡体字は、中国の簡体字をそのまま受け入れたものです。
6の繁体字は、共和国以前の中国、現在の台湾、香港、韓国(ほとんどハングルになっていますが)が使っているものです。日本の旧漢字とほとんど同じなのですが、完全に同じではありません。
たとえば、「衆」という字は、かならずしもこの形ではありません。
わたしはなにか文字を書く時は、上の六つの中から一番書くのが楽なものを選んで書いています。そんないい加減なことをしていますので、手書きで手紙を書いたりするときは一苦労です。
好みとしては旧漢字、繁体字が好きです。ですから、わたしにとって台灣は漢字天国です。個人的な趣味判断にすぎないのですが、デザインが新漢字や簡体字より美しいと思います。