老眼鏡
わたしはかなりひどい近眼です。
棟方志功ほどではありませんが、結構ひどい近眼です。
近くを見るときはよいのですが、遠くがいけません。もわもわとしてゐて、小さな字は読めません。
とりわけ困るのが「液晶画面」です。このごろは、とくに駅などで液晶掲示板が増えましたが、あの黒い画面にオレンジ色の光がちらちらする画面は、実に見えにくいのです。なんとかならぬものでせうか。
こんなわたしですが、人前に立つて、ものを読むやうな機会があります。
さうすると、メモなどを手にもつて読むわけですが、あまりそのメモをぐつと近づけてみるわけにはゆきません。
そんなことをしたら、紙に顔を埋めることになりまして、聞いてくれるひとにはなはだ失礼になります。
ですから、わたしはメモを大きな紙に書きます。なんとも困つたものです。
でも、わたしには秘密兵器があります。
それは「老眼鏡」です。
百円ショップで購入しました老眼鏡を、近眼鏡の上にかけると、実によく見えるのです!!
なぜなのかはわかりません。
でも、あまり格好のよい風情ではないので、人前では使へないのが難点です。それに、目にも悪さうです。
わたしが老眼鏡をかけるのは、まだまだ二十年、三十年も先のことであるはずです。先駆けはいけません。
かういふ話をすると、きまつて、みなこはい顔をして、わたしにかういひます。
悪いことは言はないから、新しい眼鏡を買ひな。
でも、駄目なのです。わたしの近眼はひどくて、矯正がこれ以上できないのです。やれやれ。
みなさん、暗がりで本を読むのはやめませう。
中学生の時に、めがねにあこがれて、わたしはものすごく小さな活字の本を暗がりでわざと読んでゐました。結果、めがねをかけることに相成りました。しかし、
ああ、ここまで悪くならうとは思ひませんでした。しかし、
今カラデモ決シテ遅クナイノデ原隊ヘカヘレ(二・二六事件のラヂオ放送)ではありませんが、今からでも決して遅くないので、よくなるやうに努めます。