麥當勞
「麥當勞」mai-dang-lao、マイタンラオ。なんのことでせう?
これは中国語なのですが、実はマクドナルドのことです。
マイタンラオとマクドナルドはどう聞いても音が違ふのですが、中国語には、日本語のカタカナのやうな表音記号はありませんので、こんな風に無理やりな音訳をせざるを得ないのです。
もつとも、カタカナやひらがなのやうな視覚上の雑音がないために、同じ大きさの字がきれいにそろつた中国語は、見た目がとてもきれいです。
カタカナやひらがなは、漢字と並ぶと、どうも乱れた感じになります。もともと、草書で用ゐられたもので、一連に繋げて記されるべきものであつただけに、活字にして並べると、なんとなく冴えない感じになつてしまふのでせう。
冴えない感じだと思ふのは、わたしだけかもしれないので、まあそのことは置いておくことにします。ある日のことです。わたしは台灣西部の町、彰化にをりました。
彰化の町を歩いてをりますと、「麥當勞」をみつけました。お馴染みのMマークが目にはひつたのです。
さんざん歩いてくたびれてゐたわたしは、そこで、少し休憩することにしました。
お店のお姉さんに、わたしは熱珈琲を頼みました。
水の合はない国で飲み物を頼むには、冷たいものより熱いものを頼んだはうが安全です。もつとも、世界的なチェーン店である麥當勞なら、冷たい飲み物に生水をそのまま使ふことはないのかもしれませんが、わたしは身体頑健ではないので念のためです。
熱珈琲を受け取つて30元を支払いました。これは日本円で108円くらゐです(飲み物はどこでも大体このくらゐの値段です)。
わたしはあまり期待はしてゐなかつたのですが、珈琲をすすつてみて驚きました。
なんともおいしいのです。
わたしは日本のマクドナルドで珈琲を飲むこともありますが、申し訳ないのですが、そちらはおいしいと思つたことはありません。
日本人は外食産業に騙されてゐるのではないか? 「餌」に慣らされてゐるのではないか?
外国で食事をすると、わたしはたびたびそんな風に感じます。
もつとも、日本のマクドナルドの珈琲の場合は、その分値段を下げてゐるのですから(現在は百円)、軽々に文句をいふべきではないのですが。
日本では、安くておいしいものを求めることがとても困難です。それは、物価が高いといふことでは済まされない問題があると思ひます。
それは、日本人は生活を楽しんではいけないと、どこかで思つてゐるのではないでせうか? いや、思はされてゐるのではないでせうか?
日本の実写版ドナルドと違つて、青い目をした台湾の実写版ドナルドを見ながら、わたしはそんな風に思ひました。