生を愛す

kimikoishi2007-02-08

1986年のユーロヴィジョンで、ベルギー代表で優勝したサンドラ・キム(Sandra Kim)の J'aime la vie(わたしは生を愛す)です。演奏から服装に至るまで、なにからなにまで、1980年代といふ感じが致します。とても活気のある時代でした。わたしはそんなに好きな時代ではなかつたのですが、ふりかへつてみると、そんなに悪くもなかつたやうに思ひます。

1980年代に憧れを抱く若人がゐると聞きますので、そんな方はぜひ見てください。こんな感じの時代でございました。

サンドラ・キムは1972年、ベルギーに生まれました。現在もヨーロッパ諸国で活躍してゐます。近年の映像もいろいろありました。http://www.youtube.com/watch?v=6UZ_sM72OzI(仏語で話してゐますが、英訳つきです)。若くして世に出た人の常で、いろいろと苦労もあつたやうですが。

歌詞には、わたしは15歳で、といふくだりがありますが、サンドラ・キムがユーロヴィジョンに出た時は14歳だつたやうです。道理で、妙に声が高いわけです。西洋人はあまり高い声の歌謡曲を好まないやうです(例外はもちろんあります)。アジア人はこれに比べると高い声を好む傾向があるやうに思ひます。

アジアではありませんが、インドの女性歌手の声の高さは強烈なものですし*1、中国も一昔前は高い声をとりわけ好んで、「金ののど」と言はれた周[王旋](シュウ・セン)もやはり高い声の歌手でした。文化大革命の時の歌も、女性の声は高いのが常です。京劇は男性の声ですが、意図的に高くしてゐます。

アジア人の音楽の嗜好は、高音域が霊的な世界に通じるといふ、古い音楽の捉へ方を今に踏襲してゐるのかもしれません。舞踏と音楽は、昔は宗教的な儀式と深く結びついてゐました。

といふのは、穿ち過ぎで、単にアジア人の女性の声は西洋人女性の声より平均的に高音であるといふだけのことかもしれません。西洋人の中には、アジア人女性の声のきんきんと響く高音をとても不快に感じる人もゐるやうです。普段耳にしないやうな高さの音だつたりするのでせう。

アジア人は西洋人に比べて幼形成熟ネオテニー)であり、とりわけ女性にそれは顕著であるとも言はれます。実際、西洋諸国に行くと、アジア人は若く見られることが多いです。それはさうと、J'aime la vieですが、


J'aime, j'aime la vie わたしは愛す 生を愛す
(Même si c'est une folie?) たとへそれが常軌を逸しても
J'aime, j'aime la vie わたしは愛す 生を愛す
(Bravo pour le défi) 挑戦への喝采
J'aime, j'aime la vie わたしは愛す 生を愛す
Ne m'en veuillez pas わたしに望まないで
Je suis née comme ça わたしはこんな風に生まれたのだから
J'aime, j'aime la vie わたしは愛す 生を愛す


このやうなナウい音楽は、わたしの好みとはあまり一致しないのですが、これはなんだか心惹かれました。途轍もない明るさに救はれるやうな気がいたしました。この頃痛感しますが、生を愛するのは、とても難しいことです。