続国際きのこ会館 

kimikoishi2006-09-29

円盤を目の前にして、緊張が走ります。まさに『未知との遭遇』です。相手が動きを見せないのが、せめてもの救ひです。

……膠着状態がつづきます。

仕方がありません。いつまでも踏みとどまつてゐるわけにはゆきません。「爆弾三勇士」の唄で自らを鼓舞して、決死の覚悟で、巨大な円盤へ向かつて猛攻を開始します。

さんげつかかるおほづきをあふいでちかふ三勇士…

……円盤は、どうも巨大なきのこのオブジェのやうです。

しかし、あまりに唐突に現はれたので動揺しました。鬱蒼たる林のなかに、聳え立つきのこのオブジェ。なにも、こんなところに置かなくてもといふくらゐ、きのこのオブジェは自然との同化を拒んでゐます。

わたしは気を取り直して、坂道をさらに進みました。これから先、何があらはれるのか、恐怖が募ります。聖地は実際侮れぬものだと思ひました。

濛濛たる霞のなかを掻き分けて、わたしは邁進します。坂の頂上に近づくにつれて、巨大な殿堂がどんどん近づいて参ります。聖地の殿堂は思つたより普通の建物です。きのこの本堂だけに、建物全体がきのこの形をしてゐるのかと思つたのですが、さうではないやうです。

すると、銅像のやうなものが目に這入りました。

なんだ、これは?(哲学は驚きから始まる アリストテレス

銅像は腕を挙げて天を指し示してゐます。ずゐぶん動きのある銅像です。銅像は芸術作品でもない限り、普通あまり動きがないものです。

わたしは銅像に近寄つてみました。漫画のやうな銅像の姿勢を見て、恐怖心はすつかり掻き消されました。ほら、あの夕陽を御覧。とでも言ひかねないポーズです。しかも、その銅像は学生服を着た書生なのです。わたしは思はず、ずるずると坂道をすべりおちさうになりました。今までの緊張感はなんであつたのだらうと思ひました。

近寄つてみると、銅像の下にはきのこの彫像が囲んでゐます。さすが、きのこの聖地です。銅像をあふいで見ると、なんとも不思議なお姿。いつたいなにを指差されてゐるのか……

しかし、そこは聖地。この世の問ひを求める者には寛容です。その謎を明かす鍵は銅像のすぐ下に書かれてゐました。

「われ農夫の祈りに開眼す」

なんだ、これは!

(つづく)

その1 http://d.hatena.ne.jp/kimikoishi/20060928
その3 http://d.hatena.ne.jp/kimikoishi/20060930
その4 http://d.hatena.ne.jp/kimikoishi/20061013