靖國問題と報道

kimikoishi2006-08-18

八月十五日に靖国神社を首相が参拝しました。いつも思うのですが、これが十二月八日の大詔奉戴日(開戦記念日)や二月十一日の紀元節などだったら、もっと問題になるのでしょうか。中国の抗日記念日である五月四日に、首相が靖国参拝したら、もっと問題になるのでしょうか。

それはともかく、わたしはテレビの報道にはいつもながら失望しておりまして、日中関係が冷え込んだなどと勝手なことをどうしてくりかえし言うのでしょうか。

日本の観光地はいまや中国人だらけです。経済の交流も両国間はちっとも冷え切っていません。留学生がいつ激減したでしょうか?
でも、日中関係は最悪だなどと触れ回れば、本当にそうなってしまうかもしれないではありませんか。

少し前に、大きな反日運動がたしかにありました。今はやっていません。扇動したり抑制したり、人民を気軽に操る中国政府のやり方はあまりよいものではないでしょう。しかし、日本の60年代の学生紛争があたかも全国民的な時代現象であったかのように捉えるのがまったく間違いであるのと同じように、反日運動はごく一部の現象です。それをどう解釈し利用するかは、それを受け止める側にかかっています。

テレビの報道はセンセーションを好みます。否定的なものを取り上げると、皆大騒ぎするからです。でも、それはさもしいことです。

あいつが気に食わないという話と、あの人は素晴らしい人でという話と、どちらが盛り上がるかというと、やはり前者でしょう。それで、テレビの人々がとにかく差別意識、嫉妬、反感、助平根性などを盛り立てたがるのでしょう。

しかし、不景気不景気とテレビが散々繰り返して、消費が本当に冷え込んでしまったという責任はどう取るのでしょうか。

もともと生活水準の低い日本人の生活をさらに切り詰める原因を作って*1、恬としてその姿勢を改めないのは、困ったものです。

日中関係が冷え込んだというのは正確ではなく、日中政府の関係が冷え込んだだけでしょう。それを、日本と中国全般が対立関係にあると喧伝して回るのは、とても異常なことだと思います。

それから、テレビが統計と称していつも出してくる、わけのわからないアンケート調査結果(賛成何%・反対何%という単純なあれです)もやめたほうがよいと思います。みなさん、テレビから電話がかかってきて、無作為調査と称するものをお願いされたことはありますか? 

あれはいったいどこでやっているのでしょうか? 所詮、テレビが扇動のために勝手に作った統計に過ぎないように思います。みなさんに聞かずに誰に聞いているのか。きっと、テレビ局内の人間だけで統計でもとるのでしょう。あるいは、統計を外注に出して、統計の会社は適当な推計を出すのです。

何%という数字に、とかく日本人は弱い傾向があります。それは皆と同じでなければ落ち着かなくなるという、日本人のあまりよくない性質のせいでしょう。そんなものに振り回されるのはやめようではありませんか。善悪の判断基準が、それが多数であるか、少数であるかにしかないのであれば、それは実にさみしいことです。

テレビの報道の悪意ある視線を通した、歪曲された人間関係とは別の仕方で、そして各政府の政治的意向など蚊帳の外においた、新しい肯定的な関係が日中(もちろんそれ以外の国とも)の間に成り立つことをわたしは望んでいます。

*1:日本人は生活を楽しむことを悪徳だと思っている節さえあります。食生活の人工化・類型化の貧しい現状を見れば明らかです。キリギリスの生活がいけないのはもちろんですが、働きアリのまま終わるのがよいともいえないでしょう。しかも、時間を優雅に楽しむにはそれなりの蓄積も必要なので、楽しみを全部後回しにしてはいけないと思います。生活を楽しむにも技術が必要なのです。もちろん、それはお金を使いまくることではありません。