動物ビスケット
ドラえもんの道具に「動物ビスケット」というものがあります。
見た目は、さまざまな動物の形をした、ただのビスケットですが、たとえば猫の形のビスケットを食べると、猫の顔になってしまうという不思議なビスケットなのです。
顔だけ動物になっても無気味な姿になるだけで、何の意味もありません。でも、その何の役にも立たないところが気に入っています。ただし、ほしくありません。
動物ビスケットといえば、わたしはギンビスの「たべっ子どうぶつ」が好きです。
1979年にパリのモンドセレクションで金賞をとったお菓子です。ちなみに、このモンドセレクションとはどんなものなのか、わたしは知りません。
まあ、おいしいからよいのです。バターの味のするビスケットで、動物の形をしています。
さらに、この動物の形のビスケットには、英語で名前が書いてあります。きつねなら「FOX」のやうに。賞味と同時に、英語の勉強もできるというわけです。
動物の名前を外国語でいうのは難しいものです。あまり必要がないので覚えないからでせう。ふんころがしはフランス語で「すからべ」と言いますが、そんな言葉を使う機会は滅多にないではありませんか。
わたしが子供の頃のことですが、この「たべっ子どうぶつ」が懸賞を募っていたことがありました。
ビスケットの箱の一部を切り取って、ハガキにはって送ると、好きな図鑑が抽選で当たる、というものでした。
わたしは「さかな」の図鑑を所望しました。
一ヶ月くらいたった頃でしょうか。今よりは抜群に記憶力が良かったわたしでも、懸賞のことなどすっかり忘れた頃に、さかなの図鑑が贈られてきました。学研の学習図鑑の「さかな」の巻です。
わたしは大喜びしました。思いもかけぬ贈り物ほど嬉しいものはありません。さらに、手渡しの贈り物以上に、小包で送られてくる贈り物というものは、とてもうれしいものです(今はおとななので、ただ貰うだけでは済まず、礼状を書かなくてはならないという責務が生じるのですが、それでもうれしいです。サア、誰かわたしに贈り物をください)。
わたしはその後何年もこの図鑑を飽かず眺めて暮らしまして、さかなの名前をほとんど覚えてしまいました。いまはすっかり忘れました。多少はもちろん残っています。それにつけても、昔のほうが記憶力は良かったのです。
嬉しい贈り物をしてくれた「たべっ子どうぶつ」は、その後も変わらぬわたしの好物です。箱の絵も当時と変わっていないのも好きな理由の一つです。おかげで絵は古びた感じになっていますが。
しかし、たべっ子動物って、どういう意味なのでしょう?? ギンビスという社名もなぞです。銀のビスケット? 社長の名前が「ギン」なのでせうか。
それはそうと、たべっ子どうぶつをたべていて、悲しいことが一つあります。
それは、時折、あたまがもげたビスケットが出てくることです。いくら「PAROT」とかいてあっても、頭のない凄惨な姿を見せられては言葉もなく、とても「おうむ」だとは信じられません。
それから、さかなの形のビスケットも欲しいものです。
それから、英語だけでなくフランス語や中国語などもあるとうれしいです。
それから、十センチ大の巨大たべっ子ビスケットもあるとうれしいです。
それから、どなたかたべっ子どうぶつと図鑑をくださるとうれしいです。