洗濯の選択
わたしは洗濯が大好きです。なぜなら、汚れたものが、すつかりなくなる爽快感があるからです(ここは、フロイトを思ひ浮かべないやうにお願ひします*1)。
わたしは皿洗ひもすきです。しかし、皿洗ひは、日本の低い台所では長く作業をしてゐると、すつかり腰が曲がつてしまひ、腰が痛くなつて困ります。日本の椅子も実に低くて、わたしにはあまり合はなくて困ります。ダックスフントやお彼岸のナス馬などに比べても、はるかに長い脚をここで敢えて自慢しておくことにしました*2。
それはさうと、洗濯は好きなのですが、夜に干して、朝取り込むといふパタアン以外、わたしには選べないのが困ります。
朝干せばいいではないか? 駄目なのです。もちろん、昼干して夜取り込むのも駄目です。
天気予報が明日は雨ですと言つたのに、朝起きてみると、気持ちの良い晴れつぷり。サア、今から洗濯だ、と勢ひこむのが普通なのでせうが、わたしはそこで嗚呼と叫び、地を叩き慟哭して、全身で絶望を表現することしかできません。
とにかく、夜しか干せないのです。そして、朝にすばやく取り込まなくてはなりません。なぜさうなのかといふと、それはなぞの物体Xのせゐなのです。
なぜだかわかりませんが、昼干したままにしておくと。黄色い米粒状の糞のやうなものが洗濯物一つだけにつけられるのです。
とくに留守中はかならずやられます。もつとも、わたしがうちにゐてもあまり変はらず、やつぱりやられます。いつの間にかこつそりとです。しかし、夜は大丈夫なのです。
おそらく鳥の仕業なのですが、見張つてゐても、わづかの間隙をついて襲来し、爆弾を投下してゆくのです。
しかも、その正体はまつたくわかりません。わたしは鳥ではないのかもしれないと思つてもゐます。
・・・言ふまでもありませんが、¬(わたし=鳥)ではなく、¬(X=鳥)と思つてゐるのです(¬は否定)。
それならば、そのXはなにか?
察するに、わたしは蝙蝠ではないかと思ひます。なぜならば糞があまりに小さすぎるし、投下する場面を発見されたことが一度もなく、しかも鳥が安らげる場所は洗濯物の上にはなく、わざわざ空中浮遊して、投下しなければつかないやうな壁に投下してゐることもあり、いろいろな現場の証拠から見ても、鳥と判断する決め手にかけるからです。
蝙蝠だつてもちろん鳥なのですが、あの独特の生態から、下手人として疑はれるだけの理由は十分にあると思ひました。きつと冤罪にはならないのではないでせうか。
しかし、ホバーリングして糞を投下するといふことになれば、これはハチドリかもしれないとも思ふのですが、なにぶんにもXが姿をあらはさないことには、謎は解けぬままにをはるでせう。
結論は、とにかく天気予報が頼りなのです。