オーカッサンとニコレット

kimikoishi2006-03-22

『歌物語 オーカッサンとニコレット』Aucassin ef Nicolette*1岩波文庫)を前半分だけ読みました。つづきは今読んでゐるところです。

この物語は岩波書店のホームページの紹介によると、

「明るい南フランスのさる城主の若君が家老の養女に燃ゆる恋をしました.ところが,この乙女というのはもともとイスラム教徒から購い求められた卑しい奴隷の娘でしたので,とうてい若君のこの想いは叶うはずもありません.そこで若い2人は…….優雅な韻文と散文で交互に綴られた,フランス13世紀の美しい歌物語です」

といふもので、とても愉快な物語です。もちろん、禁煙の薬のお話ではありません。立原道造の愛読書だつたさうです。

物語の展開は少しだけ『トリスタンとイズー』に似てゐます。中世の物語のお決まりの図式といふものがあるのかもしれません。

なによりをかしいのは、若君オーカッサンが実に弱弱しいことです。オーカッサンは、元イスラム教徒で、奴隷として購はれたニコレットが好きで好きでたまらなくなるのですが、王子と奴隷娘(家臣の養女になつてゐるので元奴隷ですが)では身分違ひといふことで、無理やり引き離されてしまひます。

オーカッサンはぐれてしまひます。ニコレットに会はせてくれないなら、戦ひにも出てやるもんかと引きこもつてしまひます。

しかし、国は攻められて、存亡の危機にありました。王様は困ります。でも、オーカッサンは知るもんかと、ぐれてゐます。やむなく、王様は戦ひに出てくれたら、会はせてやると約束します。

サア、王子様、戦場に勇ましく馬で駆け込みます。なんと、敵将をつかまへて、王様の前にひきずつてくるではないですか。すさまじい変はり様です。

*1:「ef」は中世フランス語で「et」に同じ。