羊たちの沈黙

グロテスクなはりねずみ

トマス・ハリス原作の『羊たちの沈黙』『ハンニバル』『レッド・ドラゴン』は、わたしのすきな映画の一つです。三つ上げて、好きな映画の「一つ」は変ですが、三つで一つですから、よいのです。ハンニバル・レクター博士が三つの位格(personalite)であらはれるのですから、三つに一つ。

映画でレクタ―を演じるアンソニー・ホプキンスは、とても恰幅の良い体をしてゐますが、日本人でああいふ、たつぷりした太り方をしてゐるひとはあまり見かけません。

この頃の日本人は背も高くなり、足も長くなつて、西洋人並の体格になつたとよく言はれますが、いまなほ肉が食事の中心になつたわけではないし、それはどうしても無理なことだと思ひます。だいたい、大多数の日本人の食事は量が少ないし、あつさりしてゐます。しかも、日本人が西洋人の食事にすると、どうしても病気になりやすいやうです。

懐石料理を西洋人にご馳走したら、最初から最後までひととほりぺろりとたひらげて、さあどんなメイン・ディッシュが出てくるか楽しみだと言つたといふ笑ひ話があるくらゐです。どの西洋人も大食といふわけではないのですが、日本人ももう少したべたはうがよいのではないのでせうか。

とくに、をぢさんは酒を飲むと、一切食べなくなる傾向が強いやうです。若い女性の炭水化物ダイエット*1も、将来どんな結果が待つてゐるかわかりません。みなさん、たべられるうちはもつとたべようではありませんか*2。年をとつてゐる人はひかへねばなりませんが。

羊たちの沈黙』といへば、わたしのうちの犬は、はやりのアナグマ*3なのですが、なぜか知りませんが、羊のめえめえといふ声の真似をしてやると、ひんひんとないてもだえるのです。

犬ががるがると怒つてゐる時に、めえめえと羊の真似をしてやると、がるがるいかりながらも、ひんひんと哀愁のただよふ声でもだえます。もだえながら、気をとりなほし、またがるがると怒ります。

アナグマ犬は牧羊犬ではないはずですが、これはいつたいどうしたことでせう。他の犬で試したことがないので分かりませんが、貧しき子羊に遭遇すると、どうにもかうにもたまらなくなるキリスト教徒の血が、ドイツ犬には流れてゐるといふことなのでせうか。

*1:一定期間、炭水化物を一切摂取しないことにより、身体を営養失調状態にして脂肪を燃焼させるダイエットのやうですが、アマチュアボディビルダーで栄養学に詳しい知人に言はせると、これは大変危険なダイエットださうです。たしかに、短い期間でぐんと痩せる効果はあるやうですが。ボディビルダーはよくこのダイエットをする人があるさうですが、たまに若くして亡くなつてゐます。また、炭水化物の非摂取によって脳に営養がゆかなくなり、一時的に発狂に近い状態になることは(凶暴になるとか)、ボディビルダーの間では常識のやうです。

*2:ただし、酒とインスタント食品と冷凍食品だらけの外食は駄目です。偏食もいけません。現在の平均的な日本人家庭の食事を続ければ、平均寿命はこの先もつと短くなると思ひます。西丸震哉『41歳寿命説―死神が快楽社会を抱きしめ出した』の云ふほどではないと思ひますが。西丸氏の所説の「41歳寿命」は極端な表現ですが、所説の本質はあながち間違ひであるとは思ひません。

*3:すなはち、Dachs(アナグマ)hund(犬)です。もつともそれの変種ミニチュアダックスフンドです。大きなダックスフントは昔よく見かけましたが、今あまり見ません。さういへば、昔よく見たゴールデンハムスターもあまり今はゐません。小さなジャンガリアンハムスターやロボロフスキーハムスターにとつて代はられたやうです。