春 printemps

kimikoishi2006-03-11

この頃は天気がめまぐるしく変はります。なかなかついてゆくのが大変です。

けふはすつかり晴れて春の陽気です。わたしはけふは外に出られないので、面白くありませんが、一人でうろちよろしても面白くありませんので、窓から外を眺めてゐます。

この頃は「ロートレアモン全集」*1を読んでゐます。春だといふのに、ふさいだわたしの気持ちにぴつたりです。

女がソプラノで高らかに響く美しい旋律の音楽を歌ひあげるとき、この人間的な諧調を耳にすると、私の眼は表に現れない炎にあふれて苦しげな火花を放ち、耳の中では砲撃のやうな早鐘ががんがん打ち鳴らされてゐるやうな気がする。人間に由来するいつさいのものにたいするこの深い厭悪の念は、いつたいどこから来るのだらう?」(「マルドロールの歌 第二歌」)

*1:ロートレアモンはひところ日本ではよく知られた詩人です。今は若い学生の蔵書にロートレアモンが加はることはあまりないでせうが、現在は文庫本の全一巻の全集が出てをり、気軽に読むことができます。世紀末デカダンスを愛する方にはお勧めです。http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480420460/qid=1142176060/sr=1-1/ref=sr_1_10_1/249-0211859-6730717 ロートレアモン伯爵は本名イジドール・デュカスと云ひます。伯爵は自称で、デュカスは伯爵ではありません(カリオストロ伯爵も自称伯爵でしたね)。『マルドロールの歌』は、自費出版で出版社に頼んだのですが、内容の頽廃ぶりに懼れて、どこの出版社も断つたさうです。デュカスは若くして怪死してゐます。暗殺説もありますが、現在は病死といはれてゐるやうです。