三信ビル

kimikoishi2006-03-09

パソコンや携帯電話などの精密機械は製造過程でいろいろと悪いものを出すさうです。バッテリーや半導体の製造はクロムやダイオキシンを伴ひます。

かうしたものをつくる工場が中国などの汚染物質に寛大な国で行はれてゐるわけです。ばらまかれたクロムやダイオキシンは骨を溶かし、細胞を狂はせます。

先進国と呼ばれるものの経済は、貧しい者の生命を奪ふことで増大するものであることを、つねに忘れてはいけないと思ひます。

それには、つねに埒といふものが必要なのでせう。経済はそもそも家政の学なのです。家があまり大きくなるのはよくないことではないでせうか。迷路のやうになつた家は荒れ果てるのです。

さすがに、すべての経済活動をやめるわけにはゆかないのです。しかし、守るべき埒はあるのでせう。それは、経済の美学といふべきものです。

美学(esthetique)はもともとギリシャ語のアイステーシスからきた言葉で、感覚されたものといふ意味があるのではなかつたんでしたつけ。

感覚的に受け入れがたい、美しくないものは、できるだけ抑制してゆくべきものだと思ひます。金では人心は買へるものではないでせう。買へるのは人心の表層のみでせう。美しいものは買へるかもしれません。しかし、美しさは買へないでせう。

美より効率が優先されることで、失つたものを再び考へなほす必要があるのではないでせうか。もはや戦後復興の時代ではないのです。

オリンピックも、東京オリンピックの時代ではないのですから、金メダルにこだはることはないでせう。美しさを楽しめばよいのではないでせうか。

有楽町にある三信ビル(1929年)に、改築の計画があるさうで残念です。きつと、合理性一点張りのビルに変はるのでせう。わたしには理解できませんが、今の日本で生活するといふことはさういふことなのでせうか。