雨さゐさゐ
雨がさゐさゐとふつてゐます。
わたしは雨にうたれて立ちつくしてゐます。
雨傘を忘れました。
空は真つ白で、うすぐらく、まだ昼間のはずなのに、いまは午後三時なのか、それとも日暮れなのか、見当もつきません。
さゐさゐとふつてゐた雨が、しだいに強くなつてきました。
雨はざあざあと地面をうちます。
空を見上げると、無数の雨がおちてきます。
雨はたいしたいきほひで、目をあけてゐるのが、なかなか大変なくらゐです。
雨は音を立てておちてきます。
わたしの顔も、髪も、外套も、すべてがずぶぬれです。
水のなかにゐるやうです。
まるで、さかなになつたやうです。
くびが痛くなるほど、わたしはずつと天を向いてゐます。
雨は吹き上げてくるかのやうに、こちらに舞つてくるのです。
さうです。雨は落ちてくるのではなく、吹き上げてきてゐるのです。
その噴水のうへに、わたしはゐるのです。
まるで空を舞ふかのやう。
わたしはひれをたててみました。
雨がざあざあとふつてゐます。