砂のふね
それは夜のやうでした。
深い眠りを楽しんでゐたのですが、いつの間にか目がさめたやうです。
眠い目をこすりながら、半身を起こしてみました。
でも、まだ夜のやうです。あたりはまつくら。
いえ、まつくらなだけではなく、向かうのはうからあかあかと光がさしてきます。
すつかりまつくらではないのですが、それでも、ここはまつくら。
ここは、いつたいどこでせう。
それよりか、妙なところに座つてゐるのに気づきました。
これは、いつたいなんでせう。
右の手のひらで、すわつてゐるあたりを、ざつとさはつてみると、ざらりとしてゐます。
おや、これは砂ではありませんか。
ざくりと砂をすくつてみます。
さらさらと砂が手のひらからこぼれます。
よくみると、あたり一面は砂でした。
それでは、あかあかと光るのはどこかと、みわたしてみました。
それは地平線の向かうから来るもののやうです。
遠くかすんでみえる地平線を目を凝らしてみました。
地平線を境に、闇の下半分と赤い光の上半分に、かつきり上下に分かれてゐます。
その赤い光は、闇にまつたくさしこんではきません。
すつかり分かれてゐます。まるで世界の境界線のやうに、地平線がまつすぐ走つてゐます。
いつたいここはどこなんだらう。
ぼうつとかすんだあたまで、そんなことを問うてゐると、うしろから声がしました。
もうぢき、ふねがくるよ。
それで、ここからぬけられるかもしれません。
ふねさへくれば、と立ち上がることにしました。