砂のふね

kimikoishi2006-03-03

それは夜のやうでした。

深い眠りを楽しんでゐたのですが、いつの間にか目がさめたやうです。

眠い目をこすりながら、半身を起こしてみました。

でも、まだ夜のやうです。あたりはまつくら。

いえ、まつくらなだけではなく、向かうのはうからあかあかと光がさしてきます。

すつかりまつくらではないのですが、それでも、ここはまつくら。

ここは、いつたいどこでせう。

それよりか、妙なところに座つてゐるのに気づきました。

これは、いつたいなんでせう。

右の手のひらで、すわつてゐるあたりを、ざつとさはつてみると、ざらりとしてゐます。

おや、これは砂ではありませんか。

ざくりと砂をすくつてみます。

さらさらと砂が手のひらからこぼれます。

よくみると、あたり一面は砂でした。

それでは、あかあかと光るのはどこかと、みわたしてみました。

それは地平線の向かうから来るもののやうです。

遠くかすんでみえる地平線を目を凝らしてみました。

地平線を境に、闇の下半分と赤い光の上半分に、かつきり上下に分かれてゐます。

その赤い光は、闇にまつたくさしこんではきません。

すつかり分かれてゐます。まるで世界の境界線のやうに、地平線がまつすぐ走つてゐます。

いつたいここはどこなんだらう。

ぼうつとかすんだあたまで、そんなことを問うてゐると、うしろから声がしました。

もうぢき、ふねがくるよ。

それで、ここからぬけられるかもしれません。

ふねさへくれば、と立ち上がることにしました。