グリーンカレー

わたしはカレーが好きで、一時は毎日のやうにたべてゐましたが、もともと丈夫ではないので、今は控へて、時々いただいてをります。

数日前は、グリーンカレーをつくりました。これはタイのカレーで、グリーンカレーの素と茄子やたけのこ、鶏肉を炒めて、ココナツミルクを入れて作ります。

普通のカレーよりはるかに簡単に出来上がります。難点は、グリーンカレーの素は三百円はすること、ココナツミルクも輸入食材店で安く手に入れない限りは安くないことで、したがって経済的な料理にはならないのですが、それでもおいしいのでたまにつくります。

日本も変はつたもので、わたしが子供の頃は、カレーと言へば、ボンカレーのやうな標準的なカレーしかなく、インドやタイの人が実際にたべてゐる、豆のカレーや赤いカレー、緑のカレーなどは、探しても簡単に見つかるものではありませんでした。

わたしがグリーンカレーをはじめてたべたのは数年前で、グリーンカレーの素をたまたま手に入れまして、つくつてみたわけです。

しかし、分量を間違へたのか、とてもとても辛いものでした。口に入れてみても、最初はちつとも辛くないので、平気でうまいうまいとわしわしたべたのですが、あとでひどい目に遭ひました。

舌を刺す激痛と、胃痛に悩まされ、ろくろく眠れませんでした。それですつかり懲りたのですが、頭が悪いので、そのつらい記憶をすぐに消してしまひ、二度目にまた食べたわけですが、今度は辛くもなく、じつにおいしいものだと感心したのです。

辛いカレーはとても好きなのですが、胃腸には少し刺戟的過ぎるやうで、やはりインドやタイの人みたいにはゆかないものです。

学校の先生で、インド旅行が好きで、もちろんカレーも好きで、毎食すべてカレーにしてゐるといふ変はつたひとがゐましたが、この人、困つたことに、授業中に突然目をむいて、胃痛に転げ回るのださうです。まさに、突然その胃痛はやつて来るさうで、予測できないものなのださうですが、その苦悶の姿を見せられる生徒は、少し気の毒です。