ニコラ・フラメル Nicolas Flammel

St. Jacques de la Boucherie

ニコラ・フラメルは14世紀〜15世紀初頭の錬金術師です。ハリーポッターにも出てくるさうですね。

フラメルは、たまたま入手した錬金術の本をなんとか解読しようと旅に出て、師を探します。旅先で、これもまた偶然に博学のユダヤ人と出会つて、錬金術の奥義を知り、賢者の石をつくることができたさうです。

フラメルは莫大なお金を教会に寄付してゐます。また、慈善事業にも熱心で、莫大な金を密かに錬金術で拵へたからだと噂されたやうですが、本人と愛妻ペルメルの生活は至つて質素なものだつたと云ひます。

錬金術の謎を解いたのは年をとつてからで、彼の生業は代書屋で、パリのサン・ジャック・ド・ラ・ブーシュリ教会(St. Jacques de la Boucherie)の近くで店を開いてゐました。

この教会はフランス革命の時に破壊されて、今は塔(鐘楼)だけが残つてゐます。その鐘楼をサン・ジャック塔と云ひます。中には入れませんが観光名物になつてゐます。
右の絵が、在りし日の教会です。この教会は巡礼の出発点でもありました。

フラメルは78歳で亡くなりますが、じつはその後はひそかに妻ともども印度で不老不死で暮らしてゐて、時々ふらりと巴里にやつてくるのだと云ひます。18世紀にはオペラ座にあらはれたと云ひます。

ニコラ・フラメルは、パリ3区のサン・ニコラ・デ・シャン教会の近くに家を持つてゐまして(慈善事業をそこでやつてゐたやうです。当時は貧民地域だつたさうです)、今もそれは残つてゐます*1

メトロの「Arts et Metiers」駅の近くにあります。1407年建造の古い家です。今は料理屋になつてゐます。現存するパリ最古の住宅です。
いまもフラメルがふらりとやつてきては、地下の暗い部屋で錬金術を試みてゐるのかもしれません。

古い建物といへば、さういへば、3区にはハーフティンバーの建造物が一軒あります。これも15世紀頃の建物で、パリに木造建築禁止令が出る前の建物です。現在、一帯は華僑が多く住んでをり、今はベトナム料理屋だかになつてゐます。

ちなみに、パリ市内に現存するハーフティンバーの建築物は2軒しかありません。

ニコラ・フラメル宅の近くにぶたまん(包子)を売る店がありまして、値段は一個50サンチームでした。70円くらゐです。これが滅法おいしくて、時々買ひにゆきました。ぶたまんは2種類ありました。

ぶたまんの他にも、にらをまぜこんだひらべつたい饅頭のやうなものもあり、これも安くおいしいものでした。

日本の中華料理はいかにも日本の味にされてしまつてゐて、おいしいことはおいしいのですが、中国人がたべておいしいかどうかはわかりません。中国と日本は距離も近く、料理の感じも、西洋料理と比べれば、極端に異なることはないので、中国料理も日本では日本風になつてしまつたやうです。

だから、中国で中華料理をたべてがつかりしたといふ話もよくききます。日本風中華料理の味ではないですからね。(上海の和平飯店は戦前から日本人がよく出入りしたさうで、日本人の好みに合ふやうです)

わたしは日本風中華料理も本物の中国料理も、どつちもすきですからよいのですが(犬料理は嫌ひですが)、パリにあるやうな、中国人のための他国人に媚びない味を楽しむところが日本にあまりないのは残念です(大久保にありますが)。日本ではあまり見かけないお手軽中華料理を安く買へれば、ふだんの粗末な食事に一品添へることもできます。日本式のおそうざいやは高価で、かつわたしのこのみに合はないので残念です(からあげは別)。

フラメルの話が、いつしか、ぶたまんの話に・・・