インヴェーダー道路
わたしは晴れた日なぞは、颯爽とドライヴに出かけることがございます。
わたしの愛車は、スーパーカブでございます。緑色の愛車でございます。
時速30キロで颯爽と野山を駆け抜けます。
わたしの愛車は小型でございますので、こはい目に遭ふことがしばしばで
ございます。
運転があまり上手でないドライヴァーの方は、矢のやうに駆け抜ける
わたしの姿をお見落としになります。
これは、結構こまります。
馬鹿ニシナイデヨ。ソツチノセヰヨ。
と言ひたいことはしばしばですが、へたくそな・・・いえ、あまり
運転になれていらつしやらない方は、わたしを大層こはい目に遭はせたことに
まつたく気づかずに去つてゆかれます。
こはいのは人だけではございません。
わたしが恐れておりますのは、だんだら模様道路でございます。
もしくは、インヴェーダー道路でございます。
あ。教則本にはそのやうな名前ではのつてをりませんので。
わたしが勝手につけました名前でございます。
それは右の絵のやうな道路でございます。
急カーヴになると、白線の内側に四角い白い模様が次から次へと
道路にあらはれます。
このだんだら模様は、やさしくわたしに「ここはカーヴがきついぞよ。
お気をつけ召され」と、囁いてゐるつもりのやうですが、
わたしにはただの恐怖にございます。
爆音高らかに、わたしのスーパーカブが急カーヴにさしかかると、
このだんだら模様が、わたしの目を次から次へと襲つてきます。
ちらちらちらちらと、インベーダーゲームのやうに、上から下に
悪魔のやうなしろい四角が襲つてきます。
わたしは抵抗するすべはありません。
眩暈におそはれながらも、わたしは姿勢を守るのに必死です。
ですが、スーパーカブは急カーヴに差し掛かるとなると、
私自身を傾ける必要もございます。
これはもう地獄でございます。
どうやつて攻略したものか。いつも頭を悩ませてをります。