帝国図書館

骨董カード

けふはかへるさんと帝国図書館にゆきました。帝国図書館国会図書館のことです。
昔は帝国図書館と言ひました。


ずゐぶん使ひやすい図書館になつたものです。昔に比べると。
なんでも電子化されて、紙に書く機会がほとんどありませんでした。


本の引き出し注文も、図書館の中にあるパソコン上で簡単に出来ます。
以前は、大きな索引箱からカードを探り当てて、あるひは大きな書誌の本から書名を探り当てて、そこにある請求記号を紙に書いて、係の人に渡すといふ作業が必要でした。新しい本ですとパソコンで検索できましたが、この検索機の数が少なくて、待たされることがしばしばでした。もちろん、検索したデータを紙に書き写して請求する必要があります。


そして、その請求書には、一々、自分の名前と請求者番号を記さなくてはなりません。これがなかなか時間のかかる作業でした。そして、本が出てくるまでに四十分かかりました。いまはもうすこし早くなっているようです。だいたい請求書に記載不備があるといふことがなくなつたわけですから!

要するに、本を二冊引き出すだけなのに、面倒な作業つきで一時間かかるわけです。
だから、国会図書館に行くのはいつも憂鬱でしたが、けふはさういふ面倒な目には遭ひませんでした。ただ、お年寄りには使ひにくくなつたと思ひます。それに、戦前に書かれたと思はれる、手垢が黒くこびりついてゐる貴重なカードを探り当てるといふ古風な作業の楽しみはなくなりました(実は面倒なだけで、わたしは好きではない作業でしたが。古い古いカードは味はひがあります)。


わたしは作業が楽になつたといふ点で、国会図書館電子化の恩恵を大いに受けたわけですが、電子化で、一つだけ困つたことがあります。
それは、古い本を、次々とマイクロフィルム化してゐることです。マイクロフィルムは閲覧がとても面倒なのです。なんといつても目が痛くなります。本を一冊読み終へた時は、くらくら眩暈がして、たふれさうになりました。


たふれさうになつたので、かへるさんと食堂へゆきました。学生食堂を思はせる懐かしい感じです。ここの国会カレーはなんとも珍妙な味で、インスタントではないかと思ふのですが、どのインスタントカレーにもない、独特の味はひがあるカレーなのです。


ところが、わたしはくらくらしてゐたので、そのカレーのことを忘れてゐて、カレーを食べるべきところ、かつどんなぞをたべてしまひました。これはあまり美味ではありませんでした。かつはおいしかつたけど。


かへるさんはねちやねちやしたへんなものをたべてゐました。おいしくなかつたらしく、わたしに半分くれたので、うまうまとたべました。


しかし、家にかへつてきたところで、もう一冊調べることがあつたことに気づくとは、なんといふ莫迦でせう。わたしの頭も電子化する必要がありさうです。