TGVならぬTrain Grand Tard

いぬならかはいいんだけど・・・

けふは田舎電車に揺られて町に向かひました。わたしは本を読んでゐました。空いてゐる電車は読書の場になかなか最適です。横長のがつくんがつくん揺れる椅子でなければ、もつとよいのですが、特急のやうな独立型の椅子の電車は、なかなかお目にかかりません。さういへば、フランスの鉄道の椅子は最高でした(地下鉄以外)。椅子はやはり洋物に限ります。


それで、わたしは本を読んでゐたのですが、ふと目を上げると、目の前の女性(二十歳前くらゐ)が、おもむろにスリッパを脱いで、クリームを足にべたべたと塗り始めました。脚ではなく、足です。裏表にまんべんなくべたべたと塗つてをります。


田舎電車なので空いてゐるとはいへ、びつくりしました。


おわー。穢い!!
どうか、その手で吊り革をつかんだりしないやうに、と祈りました。


すると、この女性五分ばかりも丁寧に足の指までクリームを塗つて、やうやく気が収まつたらしく、今度は別の作業を始めました。
化粧です。


あるかなきかのまつげを懸命にひつぱつてゐます。目に足の黴菌が入らないかと心配になりましたが、まあ、人の心配をしてもしかたがないので、本を読み続けました。


さうして、しばらくたつて、電車がどこかに止まつたので、また見ましたら、例の女性はこんどはなにをしてゐるのか、べたべたと頬をさはつてをりました。


おー。水虫菌が顔に入るぞよ、と、またびつくりですが、手をのけた時に、頬ににきびができてゐるのが見えました。そこが、かゆくならないとよいけどねえ。
と思ひましたが、犬や猫のやうなふるまひに魂消つぱなしでした。


電車の中での化粧については、いろいろと言はれてゐますが、わたしはまあ読書の邪魔をされなければいつかうに構ひません。けふみたいに穢いのは別として。
ところで、話題の「電車男」ですが、女性専用車両に酔漢か闖入した場合は、どうなるのでせう? 強いをばちやんがゐれば退散できるでせうか。


それはさうと、美女美男といふものは舞台裏を見せない人でなくてはならないと思つてゐます。役者が舞台に出てから化粧を始めたら話になりません。部屋の中でさへ、わたしは役者でありたいと思つてをります。・・・喜劇役者に。