夜汽車 Wenn ich ein Voglein war

kimikoishi2005-03-30

「♪いつもいつも通る夜汽車♪」といふ歌を御存知の方は多いでせう。わたしは小学校の唱歌の授業で習ひました。「夜汽車」といふ物悲しい歌です。http://www.klassiskgitar.net/folksongs.html

この曲をはじめて覚えた時、知らぬ他国をごうごうと音を立てゝ進む夜汽車のなかで、時折物悲しい汽笛が鳴るのを聞きながら、寝台で眠れぬ寂しい夜をすごしてゐる自分を想像したものでした(之は十数年後に実現してしまひ、わたしにとつて辛い思ひ出となつてしまひました)。

それはともかく、この「夜汽車」といふ曲は昭和二十七年に翻訳されて紹介されたもので、もとはドイツ民謡だつたのです。原題は「Wenn ich ein Voglein war」といふさうです。もしわたしが鳥であつたなら、といふ意味です。

原詩は十八世紀のものらしいので、のせても問題ないでせう。これは歌詞の二番目です。

Bin ich gleich weit von dir,
Bin ich doch im Traum bei dir
Und red mit dir.
Wenn ich erwachen tu
Wenn ich erwachen tu
Bin ich allein.


あなたと遠くはなれてゐるの
でも 夢のなかでは一緒ね かうしてお話してるわ
けれど 夢が醒めたら 夢が醒めたら
わたしはたつたひとり


なぜ「夜汽車」がドイツ民謡であつたのかが分かつたのは、昨日「ホロコースト 救出された子供たち」(2000年、米)といふ映画をみたからでした。そこで、子供の歌声で、独逸語らしき「夜汽車」が流れたのです。

ナチスの迫害から逃れるために、ドイツからイギリスにユダヤ人の子供達がたくさん送られたことがありました。イギリスの有志が、ユダヤ人の子供だけ面倒を見てあげようといふことになりました(素晴らしいことですが、美談ばかりではありません。子供達は下男にされることもあり、またやむを得ないことですが、幼く美しい子供が優先的にもらはれてゆきました)。

さすがに、職のなくなつた親を引き受ける余裕はありませんから、子供の親はドイツにとどまったままでした。ナチスの迫害のために、親と離れ離れになつた子供達は、この歌を何んな思ひで歌つたことでせう・・・