きつねものがたり

kimikoishi2005-11-08

Le roman de Renart(ルナールの物語)といふ12世紀後半のフランスの物語があります。
岩波文庫の「狐物語」で簡単に読めます。

きつねのルナールが悪知恵を働いて、いろいろな悪巧みをしては、狼のイザングランをやつつけたり、逆に自分が引つかかつてひどい目にあつたりします。じつに愉快な物語です。

冬の寒い夜、きつねのルナールは狼をだまして、凍つた川にある小さな氷のあなにしつぽをたらしてゐると、さかながおもしろいほどとれるよ(わかさぎ釣りみたいなものですね)、といふと、狼は感心して、ルナールのいふとほり、しつぽをたらします。

それがあとでどうなるかは、みなさんご存知でせう。わたしは子供の頃にこの話をきいたことがあります。きつねのルナールの物語とはしりませんでしたが。

ルナールはフランス語で「きつね」といふ意味ですが、もともときつねはgoupil(グピ)といはれてゐたさうなのですが、わるぎつねルナールの物語があまりに有名になり、きつねそのものをルナール(renard)と呼ぶやうになつたさうです。

わたしはルナールの「しっぽにかけて言うが」といふ表現が気に入りました。わたしもなにかの時に、しっぽにかけて言うが、を使つてみたいと思ひます。

ルナールが仮装して、ドイツ人の発音を真似して、外国狐のふりをする場面がありますが、イギリス人やドイツ人のフランス語の発音を揶揄することが、当時すでにあつたといふのは初めて知りました。

『トリスタンとイズー』も中世の物語ですが、『狐物語』と同様に、中世のフランスにおけるイギリスの占める位置の大きさが伺ひ知れました。これは、ルネサンス以後のフランス文化だけに接してゐる限りは、あまり表面化しないことです。もちろん、ベンタムやロックなどの思想的影響はよく知られてゐることですが。

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の勝ち猫もちさんの「くちあけきつねこんこん」はとてもかはいいです。ルナールはうそつきでHなので、こんこんとはだいぶんちがふやうです。