学徒出陣

kimikoishi2006-12-19


昭和十八年(1943年)秋に、文系学生の徴兵猶予が撤廃されることになりました。戦場に赴くことになった大学生たちのために学徒出陣壮行会が明治神宮外苑に於いて催行されました。

文系大学生といえば、当時は軟弱者の代名詞で、きっと戦争にはあまり行きたくなかった人たちであろうと思います。せっかく大学生になって卒業までは徴兵猶予があると思ったら、その特権もなくなってしまったので、さぞかし残念だったろうと思います。

この徴兵猶予撤廃の背景には、地方者からの反発があったといわれています。戦局は日増しに悪化している時で、農家の長男までも戦場に赴いているのに、学生だけ例外などとは許されないのではないか。都会の連中を優遇しすぎだという地方からの反発に屈する形で決まったことのようです。

一月から防衛庁防衛省になるそうで、以前であればマスコミが大騒ぎして、左翼勢も大いに暴れたと思うのですが、この頃は粛々としたものです。戦後長らく続いてきた体制の変化を感じます。それがよいことか、わるいことかの判断はわたしにはできません。

経済を守るために、日本はかつて破局の戦争への道を歩みました。現代の戦争は経済の戦争が主流で(民族紛争も経済の戦争とまったく無縁ではありません)、わたしはそんなものにひきづられることだけはご免であると思っています。戦争の怖さは軟弱化した日本人にはそれなりに分かると思うのですが、経済というものの怖さについては、日本人はかなり鈍感であると思います。

それは、経済ではない枠組みを喪失しつつある今、とくに顕著なことかもしれません。近年の日本人は抽象的、普遍的な超越について語ることをいやがる傾向がありますが、そもそも経済は超越を語らないことで成り立っているものですから、それは性に合った行動なのかもしれません。

もし戦争に駆り出される日が来るとしても、わたしに逆らうすべはないのでしょう。戦争中の大学生の間では Schicksal(運命)という言葉が流行していたそうですが、わたしもこの頃はどうにもならない Schicksalを感じています(すぐにでも戦争が来ると思っているわけではありません。それとは別のSchicksalです)。